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フルート奏者 宮前丈明のページです
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1)    ピュアな音を用いて4つの各課題曲のコンテクストを探っていく。フレーズを音楽的に繋げるためのキャッチング・ブレス、フレージングのための長い、または中庸のブレスについても理解する。
 
2)    次にコントラストを付ける。最初の3曲は広がりのある響き成分を持った音をベースに、4曲目は輝き成分のある音をベースにフレージングを構築し、陰影をつけていくのが適切であることがわかる。主として長い音においてどのような陰影をつけられるかが鍵である。歌を表現する音(例外もあるが主として長い音)、動きを表現する音(例外もあるが主として短い音)の諸機能に留意。これらの作業が、後に生命感あふれる表情を生み出す素材となる。
 
3)    表情をつけるにはアタックの軽重、ヴィブラート、ルバート・アゴーギク、等が使われるが、それらが音のいかなる特質を増強したり隠したりするのか、それによってフレーズ総体に対していかなる表情や生命感が加えられるのかを、「常に楽曲全体のコンテクストとの関連において」一音一音確認していく作業が肝要である。

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1)    音量のみを聞いて練習するとppの響きが貧弱な際に気づかないので注意。広がりのある響き成分を保持したppから始める。
 
2)    音の緊張感や輝き成分の乗り方に注意を払いながら、fでは「表現された力強さ、雄大さ」を狙って、耳で聞き分ける。音圧がどの程度で、倍音がどの程度かを気にすることは音楽的解決に繋がらないので避ける。
 
3)    息継ぎをとらずに一息でppからffへの練習も付加する。
 
4)    この項目ではデクレッシェンドの課題はない。加えるとすれば、ffの音を素早く、響きの広がるppに戻す訓練(subito pianoの練習)をすすめる。これは最終セクションの、長い音に対して効果的な陰影をつけるテクニックに関連する。

補足:タンギングの舌の動き
 
1)息の流れにガイドされるように舌先が前方へ移動
(ベルヌーイの定理の適用可。口腔内は陽圧、アパチュア付近はそれよりも圧は低いので、十分にリラックスし、息の流れを感じることのできる舌先はその低圧部位にドライブされて前方へ)
2)舌先がアパチュアに一瞬、スポッとはまる。鋭くはまる、ソフトにはまる、などは自在。
3)舌筋の伸展による受動張力(伸びたゴムが元にもどろうとする受動的な力)と、唇の弾力の助けによって、素早くストレスなく舌はもとに戻る。2)から3)への移行は即座にすることも間をおくことも楽にできるので、次の音との間を自由に制御できる。また、鋭いアタック、ソフトなアタックも自在。
 
舌は巨大な筋肉の塊なので、重力に抗して舌先を持ち上げるような動作のタンギングは舌と連関して運動する喉頭筋群のストレスとなり、音の響きが硬く、薄くなるので避ける。会話の際には重力に抗した舌の動きの発音が必要となることもあるが、演奏時のタンギングほど頻繁ではないこと、会話時の舌根の位置は歌唱発声時や(最適な響きが出ているときの)管楽器演奏時よりも上にあると推測されることから、会話時にはストレスがかかりにくい。

1)    ノータンギングのアタック(無声子音hの短く響く音)で音質を確認。支えられらた息で音の本体(母音)、エコーが響いているか?支えられた息であれば、横隔膜が柔軟なクッションのように息の重さを受け止めている感覚と、それに呼応した響き成分とエコーが聞こえる=体性感覚と音質のマッチング。
 
2)    「支えられた息」の身体メカニズムは、呼吸筋全体で息の流れを受け止めるものであるが、メインの役割を果たす横隔膜は、それがインテリジェントなクッションのように(=より生理学的な記述はここではしない)柔軟かつ的確に息の重さを支える、といったものである(呼気時の吸気的活動)。ゆえに横隔膜がクッションのように働いている感覚を感じ易いのは、息が響きのポイントに当たって「トン」(スタッカート)、「トーン」(ベルトーン)と鳴る、短いが響きのある音である。この時の「息が支えられている」という感覚と、それに対応した音本体の響きを保持したまま音のボディーを延長すると、良質のロングトーンとなる。支えられた息の感覚がわからないままロングトーンを沢山練習するのみでは、しなやかで響く音質を得られるのは幸運なごく一部の人たちであると考える。
 
3)    支えられた息、無声子音のアタックが良質であれば、タンギングを付ける。以前のエントリー“Concept for Musical Tone”のダイアグラムで示したように、良質のタンギング(子音)は「支えられた息」のメカニズムをより活性化させて、音のボディー(母音)の響きがより高く飛ぶ。それ以外にも、アタック自体には音全体の性格の聴覚認知を助けるという役割もある。アタックが良質であれば音の特質を聴衆に聞き取ってもらいやすいことも重要である。他方、適切でないタンギングによって逆の効果になり、音の響きがつぶれたり、音が裏返る場合も多い。どうやら、筋性防御のようなメカニズムが働いて、タンギングの結果呼吸筋の防御的緊張を招いているらしい。この場合は、「そのような防御は必要ない」ことを身体に教えてあげる必要がある。すなわち、ノータンギングの良質な響きと対応する体性感覚を、タンギングしたときも保持するように、聴覚と体性感覚を研ぎ澄ませながら、タンギング有り無しの音質を比較しながら地道に練習していくのがベストであると現時点では考える。
 
4)    課題1は短い響きの「トン」。ここでは「ン」は響きが高く切れ上がる良質のエコーを指す。
 
5)    課題2、3は下図のようにbell tone 「トーン」の「ン」の部分で音の高さが変わったものである。つまり2音目は1音目のベルトーンの響きの最後のエコー部分である。このテクニックの習得によって、早いスラーの1音目を輝かせ2音目を響かせるという、しなやかな音質変化を伴ったスラーをいとも簡単に演奏することが可能となる。その訓練は「24の練習曲」のバリエーションでもしつこく登場するし、細かい変奏曲の中で旋律部分や重要な音を浮き上がらせて表現することにも使う。

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6)    課題4は「トーーーーーーン」の音のボディー「ー」で音の高さが変わって跳躍していく。
 
7)    短い音から長い音へ、生理学的な面からも無理なく合理的に音が発展されるような課題の順序になっていることは特筆すべきであると考える。

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1)    各課題の小グループは4音から成り、1例として、それらのダイナミクスは上図のように制御する。
 
2)    適切な方法論で行われていれば、各課題最後Eの8分音符はそれほど唇にストレスはかからない。逆に言えば、早い制御においてもストレスのかからないアンブシュア バランスを探す訓練であるとも言える。早いダイナミクス変化には息の制御の迅速さが必要であるが、一定の早さとリズムを持つ繰り返し運動のほうが筋肉の持つバネ作用(ストレッチされた筋肉には受動張力が生じる)、拮抗筋の相互作用を感じ易いので、遅い動きよりも楽である。
 
3)    よって、早いダイナミクス変化(D,E)が遅いものよりストレスに感じる場合は、奏法の見直しが必要である。この場合は「音の豊かさ」のセクションを応用し、1音での早いダイナミクスが楽になってからこのセクションを学習するという順序もある。
 
1)    隣り合う音の「音色」と「音質」の同一性を保持しながら各課題を練習し、「音質」の同一性を獲得する。
 
2)    最初はピュアな音質(響き成分のみ)で練習し、次に輝き成分の乗った音で同質性を獲得する。輝き成分が響き成分に「乗る」のであって、たとえば「ダークな音」と形容されるような、輝き成分が響き成分の下にあるものは地声で叫んだ音のようなものであり、たしかに倍音としては豊かであるが響きが飛ばなくなるので、そのあたりを聞き分けて判断できるか否かが重要となってくる。
 
3)    次の音への移行がなめらか、かつ同質であるためには、移行の瞬間の「見た目にはわからない、極めて微妙な息の制御」が鍵をにぎる。優秀なピアニストのスラーのように、1音目の響きの延長上に次の音の響きが引き継がれるスラーであれば、それらは同質である。これが最小の努力とストレスで可能となるような、しなやかなアンブシュア バランスを探す。
 
4)    中音B2(英語音名)からmfで半音で降りてきてE2に達した後、D#2、D2の指使いはオクターブキイによる発音であること、また音質から言ってこれらは胸声区に対応してくるので、ピュアな音質を保持するためのアンブシュアは弱音(p)側で見つけるのが基本的な戦略である。すなわち、E2からD#2にかけてはデクレッシェンドしながら、唇に負担がかからずにピュアな音質を保持できるアンブシュア バランスを探す。

参考文献
*M. Moyse, The Flute and Its Problems – Tone Development Through Interpretation- 1973, Muramatsu, Japan
*M. Moyse, How I Stayed in Shape, self publication by M. Moyse
 
(1)            音楽的な音とは?:基本コンセプト
1)以前のエントリー”Concept for Musical Tone”を参照のこと
2)多彩な音色をもって多彩な表情を創るためには、少なくとも「ピュアに響く音」「ピュアな響き成分に輝き成分が乗った音」の2種類の音質が必要である。これは歌手やソロ楽器の奏者たちが共通して持つテクニックであると考える。
3)ダイナミクス傾向は、ピュアな音質は弱音側(mf-ppp)、輝き音質は強音側(f)と聴覚的に認知される傾向にある。倍音の性質が音量の認知に大きく影響するとする音響学的研究に矛盾しない。
4)ピュアな音質は歌手の頭声音または支えられたファルセット音成分、輝き音質は胸声音成分に対応する。
5)輝き音質は、ピュアに響いた音(響き成分)を基本とし、これに輝き成分を加えることによって出される。
6)ピュアな音質の中音シ(B2:英語音名)の音色と、ピュアな最低音ド(C1)の音色は異なるが、両者ともピュアな音質であることは変わらない=音質の同一性は完璧である。この、音質の同質性が楽曲表現における統一感を生み、質の変化を巧妙に用いることが表情の変化を生む。
 
(2)            どのようにして習得するのか?:基本的アプローチ
1)ピュアな響きの音質を全音域にわたって獲得する=自身のお手本となる基本の音質
2)次に、各セクションの課題の目的に応じて、慎重に輝き成分を響き成分の上に乗せていく。ダイナミクス、音の緊張感などのニュアンスの変化も観察する。
3)補記:事実、「アタックと音の連結」以外のすべてのセクションにおいて、ピュアな音あるいはpのニュアンスの音から開始することがすすめられている。特に最終セクションにおける、音楽的表情を作り上げていくプロセスの解説は、まさに上記コンセプトとアプローチに合致していると言える。“The Flute and Its Problems”において、中音の輝き音質は”large, generous quality”、低音のそれは”intensity and generosity”と記述されていることが文脈上、読み取れる
 
(3)            低音において、ピュアな響き成分を獲得することの困難さと解決法
1)C調フルートの低音は、管の基本周波数つまり定在波の共鳴が聴こえているわけだから、ハーモニクスによる中高音域とは異なり、息が低音のポイントに当たったときの音質は通常は歌手における胸声音成分に対応し、輝き音質である。ゆえに、低音域においてピュアな響き成分を得、それを基本音質として発展させるためには注意深い息の制御が必須である。
2)低音の通常の息のポイントはある程度の幅があるが、その最も上端の部分を狙う。すなわち息の方向は上方に向かい、アパチュアは若干狭くなる。この動きの際、唇のしなやかさを欠けば、ピッチは上ずり響き成分は低いか貧弱になる。
3)唇のしなやかさを失わずにピュアな音質を得ている時は、結果的に、下唇が上方へ引っ張られる(あるいは上方へ閉じる)動作と、上唇が後方へ引かれる(後方へ逃げる)動作が無理なく伴うであろう。別の言葉でいえば、ソノリテに書かれているように、下顎は前方へ出る。それらの動作の程度は、右手の音に下がっていくほど(G1→C1)顕著であり、左手の音に上がっていけば(G1→C2)その逆である。
4)上述の唇や顎の動作は軽微である。決して唇や顎を前後上下に強制的に動かしてはいけない。息の流れのエネルギーを感じ取り、それとの相互作用によって「つられて動く」というような動作でなければならない。このような動きであるからこそ、演奏者はストレスなく柔軟、最小の努力で最大の息のコントロールが可能となる。
 
(4)            誰が利益を得るのか?
「ソノリテ」は、フレーズと音楽表現の関係を一通り学んだ上級者以上の学習者が適切なコンセプトのもとに利用することによって効果をあげられると思われる。それまでは、1例をあげればスズキ・メソード教本の1,2巻のトナリゼーションを適切な指導者のもとに学習することをおすすめする。
 
(5)補足
「ソノリテについて」最初のセクションで解説されている、低音の音質と顎の動きの関係について、未だに議論や混乱があるため、一つの筋の通った考え方と方法論の説明を項目(3)にて試みました。



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フルート指導者(Suzuki Method and non Suzuki)
北米スズキ協会SAA認定指導者
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