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フルート奏者 宮前丈明のページです
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参考文献
*M. Moyse, The Flute and Its Problems – Tone Development Through Interpretation- 1973, Muramatsu, Japan
*M. Moyse, How I Stayed in Shape, self publication by M. Moyse
 
(1)            音楽的な音とは?:基本コンセプト
1)以前のエントリー”Concept for Musical Tone”を参照のこと
2)多彩な音色をもって多彩な表情を創るためには、少なくとも「ピュアに響く音」「ピュアな響き成分に輝き成分が乗った音」の2種類の音質が必要である。これは歌手やソロ楽器の奏者たちが共通して持つテクニックであると考える。
3)ダイナミクス傾向は、ピュアな音質は弱音側(mf-ppp)、輝き音質は強音側(f)と聴覚的に認知される傾向にある。倍音の性質が音量の認知に大きく影響するとする音響学的研究に矛盾しない。
4)ピュアな音質は歌手の頭声音または支えられたファルセット音成分、輝き音質は胸声音成分に対応する。
5)輝き音質は、ピュアに響いた音(響き成分)を基本とし、これに輝き成分を加えることによって出される。
6)ピュアな音質の中音シ(B2:英語音名)の音色と、ピュアな最低音ド(C1)の音色は異なるが、両者ともピュアな音質であることは変わらない=音質の同一性は完璧である。この、音質の同質性が楽曲表現における統一感を生み、質の変化を巧妙に用いることが表情の変化を生む。
 
(2)            どのようにして習得するのか?:基本的アプローチ
1)ピュアな響きの音質を全音域にわたって獲得する=自身のお手本となる基本の音質
2)次に、各セクションの課題の目的に応じて、慎重に輝き成分を響き成分の上に乗せていく。ダイナミクス、音の緊張感などのニュアンスの変化も観察する。
3)補記:事実、「アタックと音の連結」以外のすべてのセクションにおいて、ピュアな音あるいはpのニュアンスの音から開始することがすすめられている。特に最終セクションにおける、音楽的表情を作り上げていくプロセスの解説は、まさに上記コンセプトとアプローチに合致していると言える。“The Flute and Its Problems”において、中音の輝き音質は”large, generous quality”、低音のそれは”intensity and generosity”と記述されていることが文脈上、読み取れる
 
(3)            低音において、ピュアな響き成分を獲得することの困難さと解決法
1)C調フルートの低音は、管の基本周波数つまり定在波の共鳴が聴こえているわけだから、ハーモニクスによる中高音域とは異なり、息が低音のポイントに当たったときの音質は通常は歌手における胸声音成分に対応し、輝き音質である。ゆえに、低音域においてピュアな響き成分を得、それを基本音質として発展させるためには注意深い息の制御が必須である。
2)低音の通常の息のポイントはある程度の幅があるが、その最も上端の部分を狙う。すなわち息の方向は上方に向かい、アパチュアは若干狭くなる。この動きの際、唇のしなやかさを欠けば、ピッチは上ずり響き成分は低いか貧弱になる。
3)唇のしなやかさを失わずにピュアな音質を得ている時は、結果的に、下唇が上方へ引っ張られる(あるいは上方へ閉じる)動作と、上唇が後方へ引かれる(後方へ逃げる)動作が無理なく伴うであろう。別の言葉でいえば、ソノリテに書かれているように、下顎は前方へ出る。それらの動作の程度は、右手の音に下がっていくほど(G1→C1)顕著であり、左手の音に上がっていけば(G1→C2)その逆である。
4)上述の唇や顎の動作は軽微である。決して唇や顎を前後上下に強制的に動かしてはいけない。息の流れのエネルギーを感じ取り、それとの相互作用によって「つられて動く」というような動作でなければならない。このような動きであるからこそ、演奏者はストレスなく柔軟、最小の努力で最大の息のコントロールが可能となる。
 
(4)            誰が利益を得るのか?
「ソノリテ」は、フレーズと音楽表現の関係を一通り学んだ上級者以上の学習者が適切なコンセプトのもとに利用することによって効果をあげられると思われる。それまでは、1例をあげればスズキ・メソード教本の1,2巻のトナリゼーションを適切な指導者のもとに学習することをおすすめする。
 
(5)補足
「ソノリテについて」最初のセクションで解説されている、低音の音質と顎の動きの関係について、未だに議論や混乱があるため、一つの筋の通った考え方と方法論の説明を項目(3)にて試みました。

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